「風評被害」について嫁と一緒に考えてみた

今現在、福島からほど遠くないところの野菜、魚等を中心としたものが安全か、安全でないかがグレーということで買い控えが起こっている。


いよいよというか海外では日本製品放射線の影響を検査なんていう話までもが始まった。風評被害…という言葉が濫用され横行しているけど、これは本当に風評被害なのかな?


嫁に聞いてみた。


「目の前に総ベータ線量(放射性ヨウ素セシウム)1ベクレル/kgの水と370ベクレル/kgの水があった場合、積極的に370ベクレル/kgの水を飲む?」*1


嫁の答えは


「飲まないに決まってるっしょ」


国が大丈夫と言っているのだから大丈夫と思考停止してしまうのは自由なんだけど、累積放射線被曝量とガンについては関連性がある。米国オークリッジ研究所従事者被ばく影響調査等に詳しくあるので参照してほしいけど、統計学的に有意な関連が見られたとの調査結果があるわけだ。つまり放射線被曝量が増えれば増えただけリスクが増すし、もしガンにでもなった場合医療費を払うのは自分たちぢゃないか。


「いますぐ健康被害がない」と政府発表があったって、政府自らが「安全基準」というルールを破ってるんじゃないか。
安全基準ってなに?かたや「放射線被曝量が累積した場合どうなるのか」について、全然政府は触れていない。食べたり飲んだりする生活を続けるんだから、気になるのは「累積値」なんだよ。当たり前だけど。
この状況下で政府が「安全」という水を自らが「リスクを負って」まで飲む気になるかというと、否としかいえない。
自分が飲めない以上他人に勧めることはできないし、ましてや家族には…大事な二頭ちゃんには…


ムリ!絶対!


自分すら摂取したくないものを家族向けに購入するとか、できないだろ。当たり前だろ。
買うものにたいして吟味が厳しくなるのは当然ぢゃないか。
実際に、今までの安全基準値を超えているものまでが「暫定基準値」という、実体のない「保障」によって市場に出回っているわけで、そのなかでなにが「今までの安全基準値」のモノなのか、いや、それとも「暫定基準値」のものなのか?全然わからないんだから。
安全マージンをとりたくなるのは当然の消費者心理だよね。


そのことをもって、「風評被害」や「買い控え」と呼称しているのは、一体誰なの?誰がいってるの?


嫁に聞いてみた。


「あたしぢゃないよ」


少なくとも、消費者の視線にたったものぢゃないよね。
見かけるとすると、ツイッターとかmixiとか2ちゃんねるとか、新聞とか、政府発表とか!



………ここからはちょっと真面目に。


出荷規制されてしまった生産者の方に政府は補償をしていくとは言ってます。が、厳しい財政になっていることが多い農家の事情では、充分な補償というには程遠いかと思います。ましてや「暫定基準値」以内で出荷可能な産物を出荷している方にとっては、買い控えられたりしたら補償も取れず大損害になることは想像に難くありません。しかし、それらの産物が事実上「汚染」されていることは、残念ながら事実なのではないでしょうか?
そのことに目をつぶって「風評被害」「買い控え」と消費者を非難することは、生産者側の経済事情に基づいた消費者への暴力とすら思えます。


大変悲しいことですが、有機農法を積極的に実践されて「安全な食べ物を子供たちに」と考えておられた生産者の方が自殺するという事態にまでことは発展しました。
その自殺の原因が消費者の「買い控え」や「風評被害」にあったとは私も嫁も思えません。
聞くところによると、自殺した方は18歳から亡くなられた60余才にいたるまで農業に邁進し、丹精こめて土づくりからしてきた良心的な農家さんであったとか。生産者としての思いは、消費者に寄り添ったものであったと思います。
そういう方が絶望のあまりに自死を選ばれるにいたった苦衷を考えれば、消費者は「安全な食べ物」を求める心を失うべきではないとすら思います。消費者が妥協してしまえば、この方の志に沿うこともできなくなってしまうのですから。


正しいデータを常に提供してもらえば、正しい選択ができる…それは当たり前のことなのです。
それなのに、最近の政府発表を見ていると、正しいデータが時々刻々と提供されているとはとても思えません。
むしろ、手遅れになってからようやく渋々開陳しているとしか思えないアリサマですね。


連呼される言葉をただ鵜呑みにして取り入れるのではなく、その言葉の意味を立ち止まって自分の頭でよくよく考えてみること。
どういう意図が背後にあるのか、どういう意味で言われているのか、それをよく考えてみることが必要なのじゃないかと思うのです。


なぜ、正しいデータが提供されてないのか。
なぜ、当然の消費者心理を非難する方向になっているのか。
なぜ?

それを考えることが必要なのだと思います。

*1:ベータ線量1ベクレルはWHO基準であり、放射性ヨウ素370ベクレルは千葉県で計測されたもです。常に高い状態ではないので注意深く水質検査の結果を見守っていれば、無闇と心配する必要はないと思います。もっとも、一時的に下がったからといって無条件に安心もできませんが。