実験室?

3/11に発生した福島第一原子力発電所の事故からこちら、「官邸発表」や「報道発表」と「在野の有識者の発言」の間に大きな認識のズレというか大きな溝があるように感じてきた。また、以下のものに関して違和感をずっと感じてきた。

  1. 1号機の爆発から、正式な報道発表があるまでの大きなタイムラグがあったのは何故か?
  2. 爆発が危機的な状況となり得る状況にありながら、最低限の避難指示しかなかったのは何故か?諸外国が設定した避難区域が日本政府の避難区域よりも大幅に大きかったのは何故か?
  3. 放射線被曝量に関して『直ちに健康被害が出ない』というプロパガンダが繰り返されたのは何故か?
  4. 放射線被曝の比較に挙げられた、東京からニューヨーク間の飛行機での移動、レントゲンやCTでの被曝量との比較が繰り返されるのは何故か?


暫くは、原発=安全イメージを崩さないための恣意的なものではないか?情報統制ではないか?等と思っていたが、今日の早朝に発表された国際評価尺度(INES)のレベル7引き上げを聞いて確信を得たのは以下のことだった。


これは学術的な実験や研究で行われている方法論を基にしたものの見方ではないか?乱暴な言い方をしてしまうと、『ある事象が発生していても、観察者にとって有意なデータ得られていなければ、事象は発生していない』ということになっていないだろうか?ということ。


以下の様に考えるとそれぞれ納得がいく説明が付くような気がします。

  1. 爆発から発表が遅れたのは、どんな爆発があったかの確定情報を得るために時間がかかった
  2. 避難エリアが狭かったのは、現状把握に追われて放射線の放出が収束するまでの期間の予測ができていなかった
  3. 『直ちに健康被害がない』としていたこと、比較例の列挙は、あくまでも短期の放射線の放出を基にしたものであり、1ヶ月という長期にわたる事を考慮していなかった
  4. 事故のレベル設定が5から7へジャンプアップしたのは、放出した放射線量の明確な算定ができておらず、値が確定するまでに時間を要した


事態の正確な認識にはどうやっても時間がかかります。しかしながら、事態は現在も『放射線の放出量は横ばいかやや減少』という状況で進んでいる。悪い言い方をすれば、原子炉の中で何が起きているかは周辺からの観測でしか状況が把握できないのです。安全率を見込んで予測をした場合、『もう一つ悪い状況に陥っている』可能性が否定できる状況ではないと言えましょう。再臨界では?と報じたメディアもありますが、それを意識した避難勧告があっても然るべきかと思います。


政府、原子力安全・保安院東京電力にとって正確な情報発表は意味があるかもしれません。しかし、我々にとって有意な情報は正しい情報より、今日明日起こりうる事態とこれからの生活や人生のうえで何が起こり得るかということです。ここは実験室でもないし、我々はラットでもないのですから。

是非とも『これから起こり得ることの予測』を行っていって欲しいものです。